人々の生活がAIで豊かになっていく中で、詐欺もAIで“進化”しました。
もう、変な日本語や不自然な声だけでは見抜けません。
声も、文章も、顔まで、本物そっくりに作れる時代です。
裏を返すと、手口さえ知っていれば、騙される確率は少なくなるでしょう。
今日は、実際に出回っている新しい手口を4つと、今日からできる対策を、
できるだけ具体的に紹介します。親世代の方にも、ぜひ共有してください。
手口① 家族の声で、電話がかかってくる
一番怖いのがこれです。AIは、ほんの数秒の音声から、その人の声をそっくりに作れます。セキュリティ企業マカフィー(McAfee)の実験では、3秒ほどの音声で、かなり似たクローン音声が作れたといいます。SNSにあげた動画の声で、十分です。
そして、こんな電話が来ます。
「お母さん、事故っちゃった、今すぐお金が…」
しかも、わが子そっくりの声で。
アメリカでは、娘の声を聞かされた女性が、誘拐されたと思い込んで約5,400ドルを送ってしまった事例も報じられています。
対策
- いったん切って、本人にかけ直す。 これだけで、ほぼ防げます。慌てさせるのが手口なので、「かけ直す」を挟むだけで冷静になれます。
- 家族で“合言葉”を決めておく。 声が本物そっくりでも、合言葉があれば見抜ける可能性がぐっと上がります。
手口② 取引先・上司に「なりすます」
声だけではありません。顔も、もう偽れます。
香港では2024年、ある社員が、本社の役員を名乗る相手とのビデオ会議に参加しました。画面には見慣れた上司や同僚の顔。指示どおり送金した額は、約2億香港ドル(およそ2,500万ドル)。ところが、その会議に映っていたのは、公開動画などから作られたAIの偽映像でした。
会社員なら、誰でも狙われえます。
「至急、この口座に振り込んで」という、役員や取引先からの連絡。
こういう緊迫した状況では人間は焦り、判断力はどうしても低下してしまいます。
対策
- お金が動く指示は、必ず別の経路で確認する。 メールやビデオで言われても、電話やチャットなど“いつもの電話番号・メールアドレス”で本人に裏を取る。直接本人に会って確認することがベストなのはいうまでもありません。
- 「急いで」「内緒で」が出たら、いったん止まる。 急がせて、誰にも相談させないのが詐欺の消灯手段です。急かされたら、むしろ一拍おく。
余談ですが、詐欺や宗教勧誘でよく使われる心理テクニックとしてラベリング効果が挙げられます。人から「あなたは〇〇な人だ」とラベル(レッテル)を貼られると、無意識のうちにそのラベルに沿った行動をとろうとしてしまう心理現象です。
手口: 「頭のいいあなたならわかる」とラベルを貼る。
心理: ターゲットは「ここで『わからない』『納得できない』と言うと、頭が悪いと思われてしまう」という恐怖やプライドを感じます。その結果、よく分かっていなくても「なるほど、確かにそうですね」と同意せざるを得ない状況に追い込まれます。
ぜひ注意深く観察してみてください。決めつけてくる人は要注意です。
手口③ 文章が“完璧すぎる”メール・SMS
昔のフィッシング詐欺は、日本語が変でした。「あなたのアカウントは凍結されました。至急ご確認下サい」みたいな、不自然な感じ。
あの違和感が、最大の見破りポイントだったんです。
でもAIは、自然で、丁寧で、本物そっくりの文章を、いくらでも作れます。誤字脱字で見抜く時代は、もう終わりました。宅配便の不在通知、銀行からのお知らせ、カード会社の警告など、本物と見分けがつかないレベルになっています。
対策
- メールやSMSのリンクは、踏まない。 用があるなら、公式アプリや、自分でブックマークした正規サイトから入る。
- 個人情報や暗証番号を求める連絡は、まず疑う。 本物の企業は、メールやSMSでそれらを聞いてきません。
手口④ 偽の有名人・うますぎる儲け話
SNSで、有名人が投資をすすめてくる。芸能人の顔と声で、「このアプリで儲かりました」と動画で語る。これも、AIで作られた偽物のことがあります。皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
恋愛も同じです。やり取りの相手が、AIで生成した顔写真の“存在しない人”で、親しくなったころにお金の話になる。声も、ビデオ通話の顔すら作れる以上、「顔を見たから本物」は、もう通用しません。
対策
- SNS発の「儲かる話」「うまい投資」は、まず詐欺だと疑う。 本物の有名人が、SNSのDMで投資をすすめてくることは、まずありません。儲けることができるのであれば、独り占めしたいのが人間の常です。
- ネットだけの相手に、お金を出さない。 顔出しの動画でも、信用の根拠にはならない時代です。
だまされない人が、やっている3つの習慣
手口は色々でも、守りの基本は同じです。この3つだけ、覚えてください。
- お金の話が出たら、一拍おく。 詐欺師は「急がせて、考えさせない」。状況に追い込んできます。急かされた瞬間こそ、立ち止まる合図です。
- 連絡が来たルートと“別の経路”で確認する。 相手が指定してくる連絡先は使わず、もともとやり取りしていた連絡先で連絡を取り合いましょう。
- “事前に決めた確認ルール”を持っておく。 家族なら合言葉、会社なら送金前の確認フロー。声も顔も偽れる時代、最後にものを言うのは、前もって決めておいたルールです。
ちなみにFBIによると、2025年にアメリカで報告されたAI関連の苦情は22,364件、被害額は約8億9,300万ドルでした。
もう「自分は大丈夫」と言える規模ではありません。
最後に
ここまで読んで、ちょっと怖くなったかもしれません。
でも、それでいいんです。
手口を知って、少し警戒するようになった時点で、あなたはもう、何も知らないより、ずっと安全な場所に立っています。
AIは、詐欺師の道具にもなります。
でも、こちらも「知識」で武装できる。
怖がって遠ざけるのでも、無防備に信じ込むのでもなく、“正しく知って、正しく備える”ことが大切です。
AIの時代に必要なのは、「信じないこと」ではなく、「確かめること」です。まずは今日、家族か職場で一つ、確認ルールを決めてみてください。
※本記事の事例・数値は公開情報に基づきます(一部は2023〜2025年の事例)。主な出典:音声クローンの実験と被害調査(マカフィー)、家族をかたる音声詐欺への注意喚起(米FTC)、AI関連の苦情件数・被害額(米FBI/2025年)、誘拐をかたる送金被害の実例(ABC News)、ディープフェイク会議による送金被害(香港政府の公表/2024年)。手口・対策の解説は筆者によるものです。
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