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AIに面接をやらせたら内定が12%増えた
でも採用にかかる日数は4日のびた(応募者7万884件の実験)

2026 / 08 / 14AIdollargame 編集部読了 約9分
AIに面接をやらせたら内定が12%増えた

人手が足りず、面接の日程調整だけで一日が終わる。
そんな会社の社長に向けた記事です。

先月末、応募者7万884件を対象にした採用の実験が公開されました。
電話面接をAIの音声エージェントにやらせた群と、人間の採用担当がやった群を、くじ引きで分けたものです。

結果は内定率も入社率も定着率もAIのほうが高い、というものでした。

ただ、同じ論文の後ろのほうに、あまり引用されていない結果が載っています。採用にかかった日数は、AIのほうが伸びていました。
そして、まったく同じ「AIが電話で人と話す」仕事なのに、AIが人間にはっきり負けた実験も別にあります。

並べて読むと、AIに任せて伸びる仕事と、任せると壊れる仕事の境目が見えてきます。私たちも中小企業にAIを入れる仕事をしているので、都合のいい側だけを引かずに両方書きます。

実験の中身:7万884件の応募を、くじ引きで分けた

シカゴ大学ブース経営大学院のBrian Jabarian氏と、エラスムス・ロッテルダム大学のLuca Henkel氏の研究です。採用代行会社PSG Global Solutions(テレパフォーマンスの子会社)と組んで行われました。

ここが大事な設計です。AIに置き換えたのは「情報を集める工程」だけで、「評価して決める工程」は人間に残してあります。

応募者は6割が女性、年齢は20代が中心でした。

結果:内定8.70%が9.73%になった

「AI面接で入った人は、質が低いのでは」という疑いには、この研究は3つで答えています。辞めた人のうち会社都合の割合(41%)は両群で変わらない。入社後の応対時間、顧客満足スコア、社内の品質評価にも差がない。
つまり、「採る人数が増えた分、質が落ちた」という形にはなっていません。

面白いのは、現場の予想が外れていたことです。実験前に採用担当に聞いたところ、36%が「AI面接だと内定率は下がる」と予想し、61%が「面接の質は下がる」と答えていました。上がると予想したのは15%だけでした。

なぜ上がったのか

論文が挙げている理由は「AIのほうが面接がうまいから」ではありません。「ばらつきが小さいから」です。

面接の書き起こしを解析すると、AIは決められた話題の順番を守り、カバーする話題の数が面接ごとに安定し、質問の言い回しも標準化されていました。それでいて、相手の答えに応じた掘り下げはしている。
研究者はこれを「制御されたばらつき」と呼んでいます。

人間の面接は、面接官によって、そしてその日の状態によってブレます。
そのブレは応募者の能力とは関係ないノイズなので、合否判断の材料を濁らせる。AIはそこを削った、という話です。

副産物もありました。応募者アンケートで「性別による差別を感じた」と答えた割合が、5.98%から3.30%へほぼ半減しています。台本どおりに聞くと、余計な一言が入る余地が減るということだと思います。

見落とされがちな結果1:全体は速くなっていない

ここが、この論文でいちばん実務に効く部分だと思います。

日数を3つの区間に分けて測っています
(中央値。実際に入社まで進んだ人が対象で、時刻の記録が残っているリモート面接分に限った集計です)。

人間が面接した場合、面接した本人がそのまま採点します。
面接が終了した時点で判断はもう頭にあるので、採点はついでで終わる。

AIが面接した場合、担当者はその会話に立ち会っていません。
後から記録を開いて、読んで、初めて判断材料が頭に入る。
評価が、面接から切り離された独立した仕事になります。
そして独立した仕事になった瞬間、それは担当者のリストの一番後ろに並びます。

AIは24時間動くので入口はいくらでも速く回る。
でも、その先を処理する人の数は変わっていないので、面接済みの案件が担当者の前に溜まる。
合計が4日のびたのは、その渋滞ぶんです。

自動化した工程は速くなったのに、ボトルネックが前から後ろへ移動しただけでした。

なお論文が測ったのは日数の差だけで、
「立ち会っていないから遅い」は研究者が実験前に立てた予想です。
理由の切り分けまではしていません。

自動化した工程は速くなったのに、その後ろの人間の工程が詰まって、全体はむしろ4日のびました。

「AIを入れれば全体が速くなる」という期待は、この実験では成立していません。速さが目的なら、詰まる先を先に決めてから入れる必要があります。

見落とされがちな結果2:少ない件数だと元が取れない

コストの試算も載っています。人件費の水準とAIの価格を3段階ずつ組み合わせた9通りで、何件面接すれば元が取れるかを計算しています。

年に数十件しか面接しない会社が、コスト削減を目的にAI面接を入れると、まず負けます。この実験でAIが持っていた価値は、安さでも速さでもなく、判断材料のばらつきを消したことでした。

あと、応募者の5%は「AIとは話したくない」と言って面接を中断し、7%はAI側の技術トラブルに当たっています。合わせて1割強が落ちるので、人間が出る受け皿は要ります。

同じAI音声でも、督促電話では人間に負けた

反対の結果も見ておきます。イェール大学のJames Choi氏らによる、消費者ローンの督促電話の研究です。中国のオンライン消費者金融の実データで、2021年4月から2023年12月、対象は2,200万件超。うち回帰不連続デザインに使った部分だけで100万件を超えます。件数はこちらのほうがはるかに多い。

こちらではAIが負けました。

論文の見立ては、AIには「破りにくい約束」を取り付ける力が弱い、というものです。人に対して約束を破るのは気まずいが、機械が相手だとそこまでではない。督促は相手に損を飲ませる仕事なので、その気まずさが効いてしまう領域でした。

もう1本、小さい研究も挙げておきます。査読誌に載った中国の調査(2025年8月)では、AI面接だと応募意欲が下がるという結果が出ています(7点満点で6.13点から5.72点)。ただしこちらは203人に架空の場面を読ませたシナリオ実験で、実際の応募行動ではありません。

実際に7万件を動かした先ほどの実験では、内定の受諾率も、他人に薦めたいかのスコアも両群でほぼ同じでした。
しかも「選べる」条件では78%がAIを選んでいます(ただしAIを選んだ人はテストの点が低いという偏りも出ています)。

「アンケートで嫌だと答えること」と「実際に降りること」は別だ、と読むのが妥当です。

分かれ目は「集める仕事」か「飲ませる仕事」か

3本を並べると、線はここで引けます。

面接は前者、督促は後者でした。自社の業務をこの2つに仕分けると、どこから任せるかの順番が決まります。

明日からやれること

うちも、AIを入れて「楽になりました」で終わる仕事はあまり面白くないと思っています。ばらつきが消えて判断が良くなる、詰まっていた場所が動く、そのぶん人が別のことをやれるようになる。そこまで行くと仕事として面白くなります。どの工程を切り出すかは会社ごとに違うので、そこは一緒に考えるところだと思っています。

出典

https://arxiv.org/abs/2607.28222

https://www.nber.org/papers/w33669

https://www.nature.com/articles/s41599-025-05607-z

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「自動化したのに全体が速くならない」を設計で解きます

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