RESEARCH

AIで差は縮むのか、広がるのか
逆の答えを出した2つの実験を、順位で読み比べる

2026 / 08 / 10AIdollargame 編集部読了 約8分
AIで差は縮むのか、広がるのか

経験の浅い社員にAIを持たせれば、ベテラン並みの仕事ができるのか。
そこを知りたい方に向けた記事です。

この夏、正反対に見える実験が2本出ました。

片方は「AIで差は縮む」、もう片方は「AIで差は広がる」。

読み比べると、どちらが正しいかではなく、測っている場所が違うだけだと分かります。そしてその違いが、そのまま社内でAIをどう配るかの答えになっていました。

この記事では、成績の差を全部「100人を成績順に並べたら何番か」で書きます。何番の人が何番になったか、それだけ追えば読めるようにしました。

実験1:真ん中だった人が、11番になった

1本目は、アルゼンチンで2025年9月から11月にかけて行われた実験です。25歳から45歳の1,174人が参加しました。

課題は、いかにも仕事らしいものです。

参加者はくじ引きで、AIを使える人と使えない人に分けられました。
学歴も2つに分けています。
高卒か、大学などを半分未満しか終えていない人。
もう一方は、半分を超えて終えた人です。
以下、前者を学歴が短い人、後者を学歴が長い人と書きます。

まず、AIを渡すとどれだけ伸びたか。

両方伸びています。

ただし伸び幅は、学歴が短い人のほうが大きい。

次に、2つのグループの差そのものがどうなったか。

はっきり分かる差が、言われても気づかない差になりました。

AIを使用したら学歴による差が極端に縮んだと言うことになります。
もとの開きの4分の3が消えた計算です。

ただし、AIを取り上げたら差は戻ってきた

この研究の良いところは、課題のあとにもうひとつ、AIなしの課題を出していることです。伸びが本物なのか、ただAIに書かせただけなのかを見分けるためです。

分かったのは3つでした。

1. AIを使った人が、あとで使わなかった人より下がることはなかった。丸投げで実力が落ちる、という形にはならなかった

2. 学歴が短い人は、伸びの一部を持ち越した

3. それでも、学歴による差ははっきり戻ってきた

そして、最も実務に効くのがこれです。
AIなしの課題の成績を、AIをどれだけ使ったかと、本人がどれだけ手を動かしたかで分けると、こうなりました。

同じだけAIを使っています。それでも、AIを外した瞬間に残ったものが全然違いました。

AIを使っている最中の成績は、本人が手を抜いてもそこそこ出ます。
手を抜いたことがばれるのは、AIを外したときです。

実験2:同じAIで、逆に差が広がった

2本目は、アメリカのミドルベリー大学で2025年春に行われた実験です。学部生211人が、監督付きの対面授業に1週間あけて2回参加しました。

1回目に、知らないテーマを学んで小論文を書きます。ここでくじ引きで、AIを使える人と使えない人に分かれます。
そのあと、どちらもAIなしで理解度テストを受け、1週間後にもう一度AIなしで測ります。

ここまでは良い話です。問題は、誰が伸びたかでした。

もともと成績が良かった層のほうが、下の層より伸びが大きかった。
つまりこの実験では、AIは差を広げる方向に働いています。

分かれ目は「使い方」と「そのあと」だった

正反対に見える2本ですが、重なる線が1本あります。使い方です。

2本目の研究は、学生とAIの会話ログを読んで、使い方を分類しています。

1週間後まで効果が残ったのは、一緒に考える型でした。
丸投げ型がその場で得た質の高さは、AIを外すと消えています。

AIを使えた学生は文章を書く時間が減り、そのぶん読む時間と調べる時間が増えていました。学ぶのが楽しかった、という回答も増えています。書く手間をAIに渡して、理解に時間を戻した形です。

1本目の「関与が薄いと後に残らない」と、2本目の「説明させた側だけ後に残る」は、同じことを別の角度から言っています。

では、なぜ結論が逆に見えるのか。1本目は仕事の成果を測り、2本目は本人の実力を測っているからです。AIを持たせたままの成果を見れば差は縮み、AIを外したあとの実力を見れば差は残る、どころか広がる。同じ道具で両方起きます。

中小企業の現場に翻訳すると

まとめ

どちらもまだ査読を通っていない研究で、実験もオンラインの課題と大学の授業です。日本の中小企業の現場そのものではないので、数字をそのまま自社の見積もりには使えません。読み方として使ってください。人数も1,174人と211人で、後者は決して多くありません。

AIを渡すと、その日の成果はすぐ上がります。上がらないのは、AIを外したときに残るものです。そこを残したいなら、書かせるのをやめて説明させる。一手間だけの話でした。

出典
記事中の順位(50番の人が何番になったか)は、論文が出している効果の大きさを、点数が山なりに散らばるとみなして100人中の順位に置き換えたものです。分かりやすさのための換算で、論文にそのまま書かれている数字ではありません。元の数値は下記の論文にあります。

https://arxiv.org/abs/2608.04198

https://arxiv.org/abs/2607.08849

https://docs.iza.org/dp18792.pdf

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