RESEARCH

AIを使っている会社は69%
なのに9割の経営者が「うちは何も変わっていない」と答えた

2026 / 08 / 07AIdollargame 編集部読了 約6分
AIを使っている会社は69%

この記事は、「AIを入れたほうがいいのは分かるけれど、実際どれくらい効果が出ているのか」を知りたい経営者や現場責任者に向けて書きました。読み終わるころには、世に出回る「AI導入率◯%」という数字をどう読めばいいか、そして自分の会社では何を見ておけばいいかが決まるはずです。

今回、米国・英国・ドイツ・オーストラリアの約6,000社の経営幹部に聞いた大規模調査の原文を読みました。中で一番驚いたのは、導入率でも将来予測でもなく、「経営者自身がAIに使っている時間」の数字でした。

まず、「AI導入率」の数字は3%から88%まである

同じ「企業のAI導入率」でも、調査によって数字がまるで違います。今回読んだ論文が整理していた推計を並べると、こうなります。

10倍以上ひらいています。数字が違うのは、どれかが嘘だからではありません。聞いている相手(経営者か、担当者か、労働者か)と、「使っている」の定義(1回でも触ったか、業務に組み込んだか)が違うからです。

だから「他社はもう◯%が導入しています」という営業トークは、それ自体では判断材料になりません。私も自社の資料を作るときは、必ず「誰に何を聞いた数字か」まで書くようにしています。

使っている会社の9割が「影響はなかった」と答えている

今回の調査の本題はここからです。69%の企業がAIを使っている。では効果は出たのか。

過去3年について、雇用に影響がなかったと答えた経営幹部が90%超。労働生産性(従業員一人あたりの売上)に影響がなかったと答えたのが89%。平均すると、この3年でAIが生産性を押し上げた分は約0.29%でした。ほぼ誤差です。

ところが同じ人たちが、今後3年については生産性が1.4%上がると答えています。米国は2.3%、英国は1.9%、ドイツとオーストラリアは0.9%。雇用は0.7%減ると見ています。

面白いのは、同じ質問を従業員にすると答えがずれることです。従業員は今後3年で雇用が0.5%増えると答えました。経営者は減ると思い、働く側は増えると思っている。この認識のずれは、社内でAIの話をするときに効いてきます。

経営者がAIに使っている時間は、週1.5時間

「効果がなかった」の理由が見えたのが、次の数字でした。

回答した経営幹部(多くはCEOやCFO)のうち、3分の2以上が毎週AIを使っています。ただし平均使用時間は週1.5時間。最も多い回答は「週1時間まで」で41%、週1から5時間が24%、週5時間を超える人は7%だけです。国別では米国が1.7時間、オーストラリアが1.5時間、英国とドイツが1.4時間でした。

週1.5時間は、1営業日あたり18分です。18分で会社の生産性が変わったら、そのほうが不思議だと私は思いました。

「AIを導入した」と「AIを使っている」の間には、これだけの距離があります。

効果が出ている報告もある。

片側だけ並べるのはフェアではないので、逆の結果も見ておきます。

同じNBERから2026年4月に出たレビュー論文が、この点をまとめていました。顧客対応、文章作成、製品開発といったタスク単位の実験では、AIを渡すと作業時間が縮む、成果が上がるという結果が繰り返し確認されています。にもかかわらず、企業全体や産業全体の生産性統計には、まだはっきり出てこない。

このレビューが挙げていた説明のひとつが、Jカーブです。米国の製造業を対象にした研究では、AIを入れた直後は収益性がいったん下がり、あとから効果が出る形が確認されています。覚え直しと作り直しのコストが先に来るからです。

もうひとつ、複数のデータで一貫していたのが企業規模です。大きい会社ほどAIに投資している。今回の4か国調査でも、規模が大きく、生産性が高く、賃金水準の高い会社ほど導入率が高く、社歴の長い会社と役員の年齢が高い会社は低いという結果でした。

つまり「まだ効果が出ていない」の中身は、少なくとも三つに分かれます。使う時間が薄いだけの会社、まだJカーブの底にいる会社、そして本当に相性が悪かった会社。この三つを一緒くたにして「AIは効かない」と結論するのは、早いです。

中小企業が明日からできること

読んだ内容を、うちのような小さい会社の話に翻訳します。

まとめ

数字が動くのを待つのではなく、まず自分の1週間の使用時間と、1業務の分数を測る。ここからだと思います。

AIで作業が楽になるのは入口にすぎません。空いた時間で何をするかを決めていないと、浮いた18分はそのまま別の作業に吸われます。うちが一緒に考えたいのは、その先のほうです。

出典

Yotzov, Barrero, Bloom ほか「Firm Data on AI」(NBER Working Paper 34836、2026年2月/同年3月改訂。米英独豪の約6,000社の経営幹部を対象、調査実施は2025年11月から2026年1月。査読前のワーキングペーパー)

https://www.nber.org/papers/w34836

Babina「Understanding Firms' AI Efforts and Their Economic Impact」(NBER Working Paper 35123、2026年4月/査読前のレビュー論文。タスク単位の実験と企業全体の統計のずれ、Jカーブ、企業規模との関係はこの整理による)

https://www.nber.org/papers/w35123

導入率3%から88%の各推計は、上記34836の文献整理に記載されたもの(米国Annual Business Survey 2019、米国センサス局BTOS、英国Management and Expectations Survey、英国Institute of Directors調査、マッキンゼー2025年調査)

米国センサス局 Business Trends and Outlook Survey(BTOSの最新値)

https://www.census.gov/hfp/btos/data

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