「AIって、結局どこまでできるの?」と、本当によく聞かれる。抽象的に答えても伝わらないので、私がこの数日で実際にやったことを、正直に全部並べてみる。私はコードが書けない、ごく普通の経営者だ。専門知識はない。それでも、ここまでできた。
やったことリスト
以下はすべて、AIに話しかけて指示しただけのものだ。自分でコードは一行も書いていない。
- 会社サイトに記事機能を新設した
- 記事を十数本公開した(最新のAIニュースを記事化したものも含む)
- 記事をカテゴリで絞り込めるUIを入れた
- 記事ごとのサムネイル画像を選定し、内容に合わないものは差し替えた
- 検索対策(SEO)・SNSでシェアされたときの表示・構造化データを整備した
- ブラウザのタブに表示されるアイコン(ファビコン)を設定した
- 毎週ニュースを拾って記事が自動で公開される仕組みを作った
少し前なら、これらは専門の制作会社やエンジニアに依頼するのが当たり前だった。それを、本業の合間に、対話だけで形にできた。AIによってできることは格段に増え、かかる時間も大幅に短縮された——これは間違いなく実感している。
でも、AIは万能ではなかった
ここで誤解してほしくないのは、「AIがあれば何でもできる」という話ではない、ということだ。AIにできることは増えたが、AIが万能かと言われると、まったくそうではない。
特に、画面の外側にある仕事——人と直接向き合う領域は、AIには一切代われない。たとえば、こういうことだ。
- 取引先との商談。相手の表情を見て、その場の空気を読んで、信頼を積み上げていく仕事
- チームのマネジメント。メンバーの調子の変化に気づき、声をかけ、人を動かしていく仕事
- 会食や、人と過ごす時間。同じ場で飯を食い、本音を交わすことでしか生まれない関係
これらは資料や文章のように「それっぽく」出力できるものではない。体を運び、相手と同じ場に立つ、極めて物理的で人間的な仕事だ。そして、ビジネスの本当に大事な部分は、たいていこちら側にある。
「どうやったか」も、正直に書いておく
「コードが書けないのに、どうやって指示したのか」とよく聞かれる。答えは拍子抜けするほど単純で、欲しいものを、日本語で、普通にお願いしただけだ。「記事の一覧をトップから見られるようにして」「この記事に合う画像を選んで」「スマホで見たときに崩れないように」——専門用語は一つも使っていない。
大事なのは、一回で完璧を求めないことだ。まず形にしてもらい、見て、違うところを伝えて、直してもらう。これを何度か繰り返す。会話のキャッチボールで、少しずつ理想に近づけていく感覚だ。一度で完成させようとせず、対話を重ねる前提でいると、驚くほどスムーズに進む。
危うく妥協しかけた話
正直に書くと、途中で何度も「もうこれでいいか」と思いかけた。たとえば記事のサムネイル画像。AIが選んできたのは、なんとなくAIっぽい工場や機械の写真で、パッと見は悪くない。忙しさにかまけて、そのまま通してしまいそうになった。
でも踏みとどまって見直すと、「これは記事の中身と何の関係もない」と気づいた。そこで一枚ずつ内容を確認し、合わないものを全部選び直した。地味で面倒な作業だ。けれど、この「もう一回見直す」をやるかやらないかで、サイト全体の印象はまるで変わる。AIが出した八割の出来を、人間が最後の二割で仕上げる。その二割を、サボらないこと。
鍵は「判断」というより「妥協しないこと」だった
では、AIを使いこなすために本当に必要なものは何か。よく「判断力だ」と言われるし、それも正しい。でも実際にやってみて、もっとしっくり来た言葉がある。「妥協しないこと」だ。
AIに任せておけば、それっぽいものは確かに出てくる。だからこそ落とし穴がある。「AIに頼めば勝手にいい感じのものができる」と思い込むと、イメージと違うものが出てきたときに、つい受け入れてしまう。実際、私が指示して出てきた画像や文章には、「これは違う」と感じるものが何度もあった。
そこでサボらず、妥協せず、「ここがしっくり来ない」「この表現は会社の品位を下げる」と伝えて、納得いくまで何度も修正させる。この粘りがあるかどうかで、最終的なアウトプットの質はまったく変わる。AIの出力をそのまま信じるのではなく、人間の判断基準を最後まで手放さないこと。それが一番大事だった。
専門知識ではなく、自分の基準を持っているか
私はサーバーの仕組みに詳しくないし、コードも読めない。それでもここまで来られたのは、技術を知っていたからではない。「何が良くて、何がダメか」という自分の基準を持っていて、それを妥協せず通したからだ。
「AIを使うには専門知識が必要」という思い込みが、多くの経営者の足を止めている。でも本当に必要なのは、知識ではなく、自分の中の物差しと、それを曲げない粘り強さだった。技術はAIが持っている。基準は、人間が持つしかない。
迷っているなら、一つだけ渡してみればいい
全部を一気にやる必要はない。まずは一つの作業をAIに渡して、「これだけの時間が戻ってきた」という体感を一度作る。それが最初の一歩で、そこから仕事の見え方が変わっていく。
そして空いた時間を、AIには代われない仕事——商談に、マネジメントに、人と過ごす時間に——使い直す。それこそが、AIを導入する本当の目的だ。
「うちにはまだ早い」の正体は、たいてい「何から始めればいいか分からない」だ。始め方さえ分かれば、ほとんどの会社は今日から動ける。