HOW-TO

AIは準備に使ってよく、
判断には使わない

2026 / 09 / 08AIdollargame 編集部読了 約8分
机と椅子が並ぶ空の教室
全米最大の学区が出した方針は、禁止と許可を用途ごとに書き分けたものでした。

社内でAIをどこまで認めるか決めきれていない会社に向けた記事です。

2026年9月2日、ニューヨーク市が公立学校でのAI利用を制限する方針を発表しました。教育のニュースですが、市が公開している方針の本文にあたると、中身は「AIを禁止する」ではなく、どこで禁止してどこで許すかを用途ごとに書き分けた文書でした。その分け方が、中小企業のAI利用ルールにほぼそのまま使えます。

賛否は扱いません。線の引き方だけを見ます。数字と文言は、市の方針本文(一次資料)から取っています。

何が決まったのか

ニューヨーク市教育局(NYCPS)が2026-27年度に適用する方針です。生徒が直接触る生成AIの扱いと、端末を1人で使う時間の2つが、学年帯ごとに決められました。

禁止の対象は、生徒が直接触る生成AIです。教員が主導して全体やグループの指導に使う分には、端末の利用は認められています。

高校生は全員、45分のAIリテラシー講座を2本受けることが必須になりました。内容はAIの仕組み、データのプライバシーと偏り、学校での適切な使い方です。

期間も切ってあります。恒久ルールではなく2026-27年度の措置で、生徒・教員・保護者・議員・組合・専門家からなる委員会が2027年4月に提言をまとめると明記されています。

なお、対象となる児童生徒がおよそ60万人という規模は、市の方針本文ではなく当日の報道によるものです。

出典:NYC Public Schools「Guidance on Artificial Intelligence and Screen Time」2026-27年度(一次資料) 方針本文を見る

経営者が読むべきなのは、教職員についての段落

ここが本題です。生徒ではなく、働く側にどう線を引いたか。方針にはこう書かれています。

そのうえで、責任の所在が1行で書き足されています。

教員は、自分が作り出したものの質・正確さ・適切さについて引き続き責任を負う。AIは教育者を助けることはできるが、専門的な判断に取って代わるものではない。(方針本文より、編集部訳)

準備には使ってよく、評価と処遇の判断には使ってはいけない。出したものの責任は人が持つ。この3行が、そのまま会社のルールになります。

AIが向いているのは、材料をそろえる、たたき台を作る、下調べをするといった判断の手前の作業です。人事評価、契約の打ち切り、採否の決定のように、決めた理由を人に説明しなければならない仕事には向きません。理由を説明できないものを判断に使うと、聞かれたときに答えられなくなります。

ツールを名指しし、週あたりの分数まで決めている

高校で使ってよいツールの決め方も実務的です。市が中央で承認したのは5本だけ。Quill、Edia、Brisk Teaching、Playlab、Intel AI-Ready Schoolsです。どの高校もこの5本から申請でき、審査は個別に行われます。生徒1人が参加できるのは1つのプログラムだけ、という制限もついています。

さらに、想定する使用量がツールごとに書かれています。

「AIを導入した」で終わらせず、どのツールを、誰が、週に何分使うのかまで決めている。ここは会社でもそのまま真似できます。

選定の基準も公開されていて、生徒が自分で考える部分は生徒に残すツールを選んだと書かれています。答えを出してくれるツールではなく、考える過程を支えるツールを選んだ、ということです。

自分の審査が何を見ていないかを、自分で書いている

ニューヨーク市では、生徒が触るソフトはすべてERMAという審査を通す決まりです。ニューヨーク州教育法2-dに基づき、業者にデータの扱いを契約で約束させ、何を集めて何で守るのかを説明させる仕組みになっています。

そのうえで、市はこう書き足しています。ERMAが現在見ているのはデータのプライバシーとセキュリティであり、アルゴリズムの偏り、公平性への影響、教育効果はERMAでは扱っていない。これから評価する力をつけていく、と。

できていないことを自分で書いてある方針は、あまり見ません。社内ルールでも、今の自社のチェックが何を見ていて何を見ていないのかを1行書いておくと、あとで問題が起きたときに議論が早く進みます。

例外を、制限より先に書いている

方針には、制限してはいけないものが先に書かれています。個別教育計画(IEP)や504プランで定められた支援技術は、全学年で対象外。多言語の生徒・英語学習者が必要とするツールも引き続き使えます。市の言葉ではこうです。

この方針が制限するのは不必要なAIとスクリーンの利用であって、必要な利用ではない。(方針本文より、編集部訳)

制限を作るときに、制限してはいけないものを先に決めておく。これをやらないと、現場が止まります。

会社の1枚に移すと、6項目になる

日本の学校に同じ内容を当てはめる話ではありません。使えるのは枠組みのほうです。6つに整理しました。30分あれば1枚作れます。

1. 全員一律にしない。習熟度で分ける

ニューヨーク市は学年で切りました。会社なら、AIに触った経験がある人とない人で、当面の可否を分けても構いません。

2. 用途で分ける

準備と事務は可。評価と処遇の判断は不可。ここを書き分けるだけで、社内の迷いはかなり減ります。

3. 使ってよいツールを名指しする

何本でも構いませんが、リストにない道具は使わないと決める。増やすときは申請して増やす。

4. 使用量の目安を書く

週に何分、どの場面で、を1行。導入したのに誰も使っていない状態と、何にでも使ってしまう状態の両方を防げます。

5. 例外を先に書く

制限してはいけないものを先に決めておくと、現場が止まりません。

6. 期限を切る

恒久ルールにしない。1年後に見直すと書いておく。AIの前提は1年で変わります。

やらないほうがいいこと

「AIの使用は原則禁止」の一行だけで終わらせないことです。それだと、こっそり使う人が出て、何がどう使われたのか会社が把握できなくなります。禁止するなら、どこまでは使ってよいかを同じ紙に書く。ニューヨーク市もそうしました。

まとめ

まずは「準備には使ってよい、判断には使わない」の1行を紙に書くところからで十分です。それだけで、社内の「使っていいんですか」という問い合わせはほとんど消えます。

「禁止か解禁かの二択にしないほうが、現場は動きます。作業をAIに渡して空いた時間を、人にしかできない仕事にどう回すか。ルールはそのために書くものだと考えています」(株式会社AIdollargame 代表取締役 佐藤徳之介)

出典一覧

この記事と同じ内容を、公式noteでも公開しています。 公式note 記事一覧

社内のAIルール、1枚目を一緒に書きます

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