最初に、自分たちの立場を正直に明かします。私たちAIdollargameは、AIを使って商売をしている会社です。問い合わせや予約の対応を自動化するAIを売っています。つまり、人の仕事の一部をAIに置き換えている側にいます。
だからこの手の話は、どうしても「AIは怖くない、使う側になれば大丈夫」という、自分たちに都合のいい結論に寄りがちです。でも今日はあえて、自分たちに不利なことまで書きます。
「AIで仕事を失うのは、AIを使えない人だけだ」。最近よく耳にする言葉です。でもこれは、半分は本当で、半分はうそだと思っています。
まず、数字を見てみます
アメリカでは、22〜27歳の大卒の失業率が、この12年で最も高くなりました。スタンフォード大学の調査では、この年代のうちAIの影響を受けやすい職種で雇用が13%減り、ソフトウェア開発や顧客対応ではおよそ20%も減っています。
さらに2026年5月には、人員削減の理由として「AI・自動化」がはじめて1位になりました。その月のレイオフの約4割を占めています。
Anthropic(対話AI「Claude」を作っている会社)のCEOダリオ・アモデイ氏は、こう警告しています。「今後1〜5年で、未経験のホワイトカラー職の最大で半分が消え、失業率が10〜20%まで上がるかもしれない」。穏やかではない数字です。
じつは「2つの別の問題」が混ざっている
この話がややこしいのは、まったく性質の違う2つの問題が、ごちゃ混ぜになっているからです。椅子取りゲームでたとえてみます。
問題A:椅子の数は同じ。でもゲームに負ける人が出る。 AIを使いこなせる人が先に座り、使えない人が座れません。これは個人の努力で何とかなります。「使う側になれば大丈夫」が当てはまるのは、この問題のことです。
問題B:椅子の数そのものが減る。 AIが何人分もの仕事をこなすので、会社は必要な人数を減らし、椅子を片づけてしまいます。これは、個人がどれだけ優秀でも止められません。
そして今、現実に進んでいるのは問題Bのほうです。なのに世の中の話は問題Aで止まっている。だから「使う側になればいい」だけでは、根本の解決になりません。
最初に消えるのは「新人の椅子」
椅子が減るとき、まっ先に消えるのは新人が座るための椅子です。
これまで新人は、データ入力や資料づくりのような簡単な仕事から始めて、少しずつ大きな仕事を任されていきました。その「入口の仕事」を、いまAIが先に引き受けています。
結果どうなったか。求人は「未経験OK」から「経験2〜3年が必要」に変わりました。経験を積むための新人の椅子がないのに、経験を求められる。新卒がこの矛盾のなかに置かれています。一方で、すでに上の椅子に座っているベテランは、AIを使いこなせれば価値がむしろ上がります。
「電卓のときと同じ」とは言えない理由
楽観的な人はこう言います。「電卓やパソコンが出たときも同じことが言われた。でも仕事は無くならなかった」と。
でも今回は少し違います。電卓が置き換えたのは単純な計算という手作業でした。今回AIが手をつけているのは、「考える・書く・調べる」という知的労働そのものです。アモデイ氏も「変化は過去のどの技術より速く、社会が追いつけなければ大きな混乱もありうる」と言っています。
世界経済フォーラムは、2030年までに世界で1億7,000万人分の仕事が生まれ、9,200万人分が消え、差し引きで約7,800万人分が増える、と予測しています。数字だけ見れば仕事は増えるのです。
ただし、ここに大きな落とし穴があります。減る椅子と増える椅子は、別物です。 減るのは新人向けの椅子、増えるのはAIを使いこなせる人向けの高度な椅子。新人向けの椅子を失った人が、そのまま高い椅子に座れるわけではありません。
仕事を「2つに分ける」と見えてくる
では、どう考えればいいのか。職種に「安全」「危険」の札を貼るより、自分の仕事を“答えが決まっている部分”と“決まっていない部分”に分けるのがおすすめです。
正直に言うと、私たちが売っているAIが置き換えるのは前者です。決まった問い合わせ、定型メール、リストづくり、最初の受付。こうした「答えが決まっているやり取り」です。
逆に残るのは後者です。例外への対応、トラブルのときの信頼づくり、その場の機転、人との関係づくり。こうした「答えが決まっていないやり取り」は、人にしかできません。営業も同じで、リストづくりや定型フォローは自動化されますが、契約に結びつく関係づくりは残ります。
だから大事なのは、自分の仕事の“答えが決まっている部分”を見つけて、そこを早めにAIへ手放すことです。手放した時間を、答えのない部分に振り向ける。これが一番現実的な身の守り方です。
では、これから働く人はどうすればいい?
とくに新人や、これから就職する人に向けて、具体的な動き方を3つ挙げます。
営業に行きたいなら。 AIで営業リストを自動でつくり、最初のメールの下書きまで出す仕組みを、自分で作ってみる。それを面接で見せます。「AIに使われる側」ではなく「AIに下準備をさせる側」だと証明できます。
事務や管理に行きたいなら。 配属されたら、いちばん面倒な定型作業を1つ選び、AIで時短する手順書を作って同僚に配ります。「作業をこなす新人」ではなく「作業を無くす新人」になれます。
全職種に共通すること。 消えていく簡単な仕事には応募せず、新しく増えている「AIを使いこなす側」の仕事を最初から狙う。増えている椅子のほうに、最初から立つことです。
まとめ
「AIを使う側になれば大丈夫」は、半分本当(個人の勝負なら有効)で、半分うそ(減る椅子は個人では止められない)です。
社会の大きな流れは、私たち一人では変えられません。でも、消えていく椅子を避けて、新しく増える椅子を最初から狙うことはできます。それが、いちばん誠実な対策だと思います。
私たちの理念は「楽ではなく、楽しいを考える」です。これは、安全な逃げ場を探すことではありません。変化のなかで、自分が価値を出せる場所を、自分で選び取ること。その意味だと考えています。